ずっとやりたかったんだけどできてなくて、連休のタイミングでセールをやっていたので買ってプレイしました。
プレイ時の実況・リアルタイム考察的なものはてがろぐのこの投稿にあります。
この記事はクリア後所感をもうちょっと掘り下げてみよう!というものになります。掘り下げた結果最初考えていたことと変わった部分もあるんだけど、面白いから思考の変化の記録ということでてがろぐは残しておきます。
ネタバレしかないので以下畳んでます。クリア済だよ・ED知ってるよ・プレイする気無いよ(やれ!!!)という方のみどうぞ。
全体的な感想
・めっちゃくちゃよかった。みんなが「良い~~~!」って言ってたのがよくわかった。いいファミレスだった。
・すごく…すごくきれいな話だったな。登場キャラクターと彼らの感情・行動がごく自然に繋がっていて、アハ体験的な気持ちよさがあった。
・雰囲気が良いよなあ…雰囲気が良いものって他にもいっぱいあるからあんまり特別感のある感想じゃないと思うんだけど。私はすごい好きですね。みんな言ってると思うけどファミレスって舞台設定がほーんとに素晴らしいし、ひとつひとつの言葉のセンスが随所に光っていた…。
・色んなところに「ひととしての甘さ」が見える・それが否定されないのがとても好きでした。すごく、すごく観念的な話になるんだけど…。
・人間(じゃないのもいるけど)だもの、律しなきゃいけないのはわかるけどそういう甘さが存在してしまうこと自体を否定したら生きていくのにつらくなってしまうよね…ということを、肯定はしなくとも否定もしないところ?がいっとう好きでした。
キャラクターについて
主人公(ラーゼ)
・主人公に関わる”感情”でストーリーが展開していく、て感じじゃないのが一周して新鮮だったんだけど、この感想ってもしかしなくても相互感情でバチバチにやりたい放題するTRPGプレイヤーしか抱かないのかもしれない…と思います。
・主人公って何だかんだで外野ではあるんだけど、何だろう、でもやっぱり主人公がいないとムーンパレスでは何も起きなかったわけで…そういうところが主人公が主人公らしい立ち位置でよかった。
・性格というか、性質?がすごい個性的で、ムーンパレスの面々の中に埋もれず、状況を動かしていくのに抜群の適性がある…必要な人材だったな。konagonattsu、主人公がその物語に必要な人材なのすき!
・総当たりやってるとき壊れちゃうんじゃないかって心配だった。よかった、自我保ってくれてて。
ツェネズ
・ツェネズは本当に一人だけホラーをやろうとしててよかった…よくはない。ホラー苦手だからハラハラしてたよ正直!
・可愛いキャラクターだったな…姿を見せていない状態だと人によっては不気味だったと思うんだけど、私はビビリキャラが好きなので大分序盤から愛しかった。
・成形後の造形も他キャラと比べると萌え造形に寄ってるよね~。このデザインがツェネズに割り当たっているのが好きだ。
・良い子…というか、この子も主人公・セロニカと並ぶ「状況動かしウーマン」だよな、と思う。ビビリキャラにこの役割を任せているの、本当に好き。
・彼女は月の民で物語中で非成形状態も見れる存在だけど「これをやり切れたら変われるかもしれない」とか「お世話になった人に迷惑をかけたくない」とかそういう感性がすごく人間らしくて、全部わかったときの愛しさ……となりますね。ツェネズ、かなり好き。
・でもまあやっぱり…運が無いというか、不憫というか、そういう側面はあったなって思いますよね…よく頑張った。本当に。
ガラスパン
・名言製造女!ガラスパン! みんな大好きだと思う。多分人気投票やったら一位になる存在。すごいわかる。私もかなり好き。
・そういう存在がこう…作中の出来事に実はそんなに関与してないの、めtttttっちゃ良いバランスだな…って思うんだよな。他のキャラクターって物語にがっつり関わってるけど、彼女だけは彼女のしてきたことが物語で発生したメインの問題には関わってないの。
・そういう存在なのに、作品の顔になるキャラクター選べって言われたらガラスパンかな!てなるよね。そういう人だよね。みんな言ってると思うけど台詞が全部良いんだよ~~…。switchのショップページにも彼女の台詞が使われているしね。
・ムーンパレスに迷い込んだときもうツェネズは閉じこもっていて、自分以外のひとはいないという状況だったわけですよね。その中で途方もない時間過ごしたらそらイマジナリーフレンドの一人や二人作り出してしまうよ…それを弱さ・克服するべき問題だったと見ることは厳しすぎる気がして私にはできなかったから、ラテラの存在を忘れることもできるよってセロニカに言われたガラスパンがその提案を断ってくれてうれしかった。
・これは主人公にも言えることなんだけど、最後に新しい友人ができてよかったな~~あれめちゃくちゃ気持ちいい終わり方でしたよね…。
R・スパイク
・王、なんかもうずっと他者によって在り方をねじ曲げられていて一番おいたわしかった。私こういうのに弱いんだよな…かなり好きです。
・平和を願うことができる、善性の人ですね。初見は「え!?中世の人!?」ってぎょっとするけど、話していく中でそのファーストインプレッションを徐々に解いてくれる。ゲームの見せ方とすごく上手く噛み合ってたキャラクターだったなーと思います。
・最後は自分の意思で流刑の月に行ったのがめちゃくちゃ良くて……………自分の在り方、居場所をやっと自分で決めることができたんだよな、あの人は…。
・↑これについては人の感想・考察を見ていて雷に打たれた解釈があって。稲葉百万鉄さんの感想動画ですね。要約文を載せさせていただきます。
ムーンパレスに設定されてる王の席の場所ってその…一般人感性として「いい場所」ではないじゃないですか。過去を覗き見たときにあの場所が「王がムーンパレスに来た瞬間に座っていた席」だとわかるわけですが、今もそこに座っているということは王は席を移動してないんですよね。セロニカが座っている隅の席とか、ガラスパンが座っている月がよく見える席とかが所謂「いい場所」として呼ばれやすくて、王の席もドリンクバーは近いけど王はそんな理由で席を決めたりする人じゃない。じゃあどうして王は席を動いていないのか?……その場所を与えられた、と認識しているから、なのでは?
・これさあ~~~~!膝を叩いてしまった。ムーンパレスに来た王は、少なくともフォースプーンに王としていたときよりも自由です。まあかなり縛られた自由ではあるけど…それでも席を自分で移動する自由はある。でも彼女はそうしなかった…これにどういう意図があるかはわからないしそもそも意図無い可能性もあるけど、この解釈通りだとすると王が最後に自分で居場所を選んだ事実に味わいが出るんだよな~~~!!!
・稲葉百万鉄さん、感じたことへの言語化がすごい上手い方なので、リスペクトしています。元動画はこちら↓
セロニカ
・賢く優しい…という部分でクラインとは近しい存在なんだけど、ポジション的には処刑人⇔大罪人で対比になってるのが面白い。ここ友人関係なのがめっちゃいいなあと思うし、王と違って別離したまま終わるのもまた…良いんだよな…。
・何というかセロニカって存在がすごい舞台装置らしいよね。これはオモロ存在〜というニュアンスで言ってます。
・責任感とやさしさの板挟みになって薬を飲むに至り、そのシーンが冒頭に持ってこられているの本当に好きなんだよな。物語の一番最初のシーンを託された男、セロニカ! ファミレスを享受せよっていう作品、各キャラに与えている役割のバランスが本当に好きなんだよーーーー私の思想に合う。
・謎に男女比がめちゃくちゃ偏ってるんですけどこの作品って…その中でパリッと黒一点やりきったセロニカ、良かった。ちょっと気にした上でそれだけだった、という塩梅がちょうどよかった。この作品において性別情報ってマジで何の意味も無いからね~。
・セロニカが処刑人なの、あ~~~ね……という感じで……お前で良かったよ、と私は思います。これについてはクラインの項に書こうかな。クラインを裁いた処刑人がすごく優しくて、誠実なひとで嬉しかったです。一度は記憶を消すというかたちで逃げてしまったけど、「自分は向き合うべき」と言ってED2に着地してくれたので、十分すぎる。
・自ら記憶を消してしまったり、クラインをどうにか許してもらえないかと掛け合ったりするところに「甘さ」が見えるひとでもあるよね。そうなるのはわかる!!!心がある存在なんだものね。記憶の件は↑で清算されたと思うけど、クラインのことについては三賢人みたいなポジションのひとたちに「努めなさい」と言われていたのがその甘さの否定じゃない感じがして嬉しかったな。
クライン
・考えれば考えるほど解釈が変わる人なんだよなこのひと…。その奥行きが魅力的なキャラクターだなとも思うんですが。
・プレイ直後は「己が不死がゆえに王の死を嘆いて他の人間の殺害にまで至ってしまったのアツすぎる」って思ってたんですけど、流石に解像度低すぎだろ!!て今は思いますね…(笑い話)。己の不死性とか関係無く、ただ王の幸せを願ったひと、だったんだよな~。
・最後に王と再び出会えて、そこでどんな話をするんでしょうね。そのシーンが作中には無いのがいいんだよなあ…主人公、ツェネズ、ガラスパン、セロニカにはムーンパレスから脱出した後の後日談があるけど、王とクラインには無いの…めちゃくちゃいい…。
・満たされた物語は語るに値しないってことよね。なんかそんなことをクラインも言っていたし、その通りで終わったのが気持ち良すぎた。
・これまで作ってきたもの、インプットしてきたものから培ってきた私のフィクション倫理観の話するんですけど、クラインのやったことを正当化していいのか?ということには疑問を持ち続けていたいんですよね。
・ここでセロニカの話に戻ると、彼はその責任感の強さゆえに処刑人という役割を与えられていました。友人を流刑の月送りにすることに苦しみは覚えても、それを実行できる者だった。
・月の民ってかなり誠実ですよね。この表現が合ってるかはわからないんだけど…。普通イメージする異星人とかって侵略!侵略!って感じだけど、彼らは己の不死性をもって寿命のある人間を見下すことはなく、いつか隣人になる日が来るかもしれないという可能性をちゃんと見て月の法を整備できる存在だった。
・(まあこの見方は人間尺度って感じはする。彼らが本当に人間愛しの精神でいるのか?と聞かれると…「本人らは不死だからこそ『他者と共生していく』ことを重要視するようになった」だけだから。そこに善性や誠実さを見出すのは人間の都合のいい解釈かなという気もする。もちろんツェネズ、セロニカ、クラインは文句なしに誠実でやさしいひとたちだと思うんだけどね。)
・だからこそセロニカはクラインを流刑の月に送ったし、クラインもそれを受け入れてさえいた。クラインがやったこと、人死にが起きているのが重いんだよな~~…。私、フィクションの「モブだから死んでもいい」みたいなのはあんまり好きではなくて…。プレイヤーはフィクションとして観測してるから殺された側がモブだって判断できるけど、その中で生きている彼らにとってはそうではない…としておく温度感が私は(私は)(わたしは!!!)好き。
・最後セロニカはクラインを救おうと法を変えることに乗り出すけど、クラインの手によって失われた人間たちの命を軽んじるようなことはしてほしくないな…と思ってしまいます。まあ、セロニカは友人思いであって同時に強い責任感と隣人への思いやりを持っているひとだと思うので、杞憂でしょうが。
・杞憂だと思える描き方されてたのが良いですよね。セロニカ…。
・クラインもクラインで、王と一緒に逃げることはしなかったわけだからやはり誠実だとは思う。王を逃がすときのシーン見てると、自分がやっていることの暴力性をしっかり認識できているひとだと感じました。
世界観
・他者に拒絶されたときに不可逆な精神状態(=不死である月の民の実質的な死)が起きることがある、って設定が良すぎる。
・そして彼らは安楽月に送られる、と。比喩の話をすると、流刑月が地獄ならこちらは天国の月なのだろうな。
・実質的な死、という言葉を使ったけど、この世から消え去るということではないのがまたミソだよな。おかしくなってしまった(あまりいい表現ではないと思うけど便宜上)だけで、そうなったひとたちはまだ生きてる。死なないから。
・クラインの項でちょっと言ったんだけど、月の民が一番大事にしているのって「共生していくこと」だと思うんだよ。その彼らが共生を諦めるって、すごくすごく重たいことなんだよな。不可逆な精神状態になる=共生を諦めざるをえなくなるなんだよね…。
・ここまで不可逆な精神状態についてつらつら書いたけど、この作品中出てくるネームドの月の民3人は一時疑われたり心配されたりはしたものの実際不可逆な精神状態にはなってないんだよね。故人という枠としてもネームドはいない(92番はちょっとウェイト大きくはあるけど)。
・そうそう。共生を諦める、というのが月の民にとってすごく重いことだ…とわかると、ツェネズが46番が流刑になったりしたらと恐れたことやセロニカがクラインを流刑の月に送ってしまったことに苦しんだのにも納得がいくんですよね~~こういうことが浮き上がってくる作りになってるの、好き。
まとめ
・そんなに長くないし、拾ってない要素とかもありそうだからちょこちょこやりたいな…とも思う。すべてわかってる状態でやり直したらまた別の味がしそうだし。
・面白かった…面白かったな。こうやって色々と喋りたくなるくらいには。良質なインプット体験でございました。遊べてよかった!